実行できる事業だけが残る──PRSが示す「工程設計と数字で裏付ける経営」

新規サービスや商品を企画する際、多くの企業が「アイデアの魅力」に意識を集中させる。
だが、事業成功の裏側では別の論点が支配的だ。
それは「実行可能性」である。
コア・ランゲージ・ハブが示すPRS(プロセス設計)は、
アイデアそのものよりも、実行できるかどうかを重視する。
提供フローを設計し、工数と固定費を整理し、月間可動時間から逆算することで、
事業の“現実性”を数字で確定させるフレームだ。
全体フローを描くところから始まる
PRS設計の最初の作業は、サービス提供の全体フローを描くことである。
この段階では、工程の抽象度は高くて構わない。
むしろ全体像が一目で分かる「サービス提供の地図」をつくることが目的だ。
以下は、一般的なオンラインサービスのフロー図の例だ。
① 申し込み受付
② 初回ヒアリング
③ 言語化ワーク(SLT)
④ 設計資料の作成
⑤ 納品・フィードバック
⑥ アフターフォロー
⑦ 追加提案
工程を番号化しておくことで、
次のQC工程表作成がスムーズになる。
QC工程表で「標準作業」が決まる
PRSの中心となるのがQC工程表である。
各工程について、次の項目を明文化していく。
- 作業手順
- 注意点
- 使用する資料
- 必要なスキル
- 作業所要時間(見積)
QC工程表の一例は以下のようになる。
| 工程番号 | 工程名 | 標準作業 | 注意点 | 使用資料 | 所要時間 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① | 申し込み受付 | 予約受付→確認メール送付 | 返信遅延の防止 | テンプレート | 0.3h |
| ② | 初回ヒアリング | 30〜45分の面談 | 記録漏れ防止 | ヒアリングシート | 1.0h |
| ③ | 言語化ワーク | 強み抽出→整理 | 抽象化しすぎない | SLTワーク資料 | 2.0h |
| ④ | 資料作成 | 構造化→文章化 | 修正回数を管理 | BNF資料 | 3.0h |
| ⑤ | 納品 | 共有→説明 | 顧客理解を確認 | 成果物一式 | 0.5h |
PRSで重要なのは、
工程の「曖昧さ」を排除し、再現性を確保する点にある。
プロセス実行に必要な固定費を明確にする
プロセスが定義されると、次に数字の議論が始まる。
固定費は次の3分類に分けられる。
- 人件費(F1)
- 設備費(F2)
- 場所費(F3)
これらを合算し、月の固定費Fが算出される。
さらに工程ごとの作業時間に、マンチャージ・マシンチャージを掛け合わせることで
変動費の構造も見えてくる。
以下は固定費の枠組みの例。
F1:人件費(スタッフ月給・事務・管理)
F2:設備費(PC、ソフト、測定機器、サーバー等)
F3:場所費(オフィス、電気、諸経費)
F :F1 + F2 + F3
固定費と変動費の構造が見えると、
価格設定の「根拠」が生まれ、PMQ(単価×数量)との整合性が取れ始める。
月の可動時間から「希望数量が作れるか」を検証する
PRSの肝となるのは
「生産能力の現実性」である。
月間最大稼働時間(MAX)の中で、
実際にサービスを何件提供できるのかをシミュレーションする。
例えば、従業員が1名フルタイム、
1日の実質稼働6時間、稼働日数20日とすると、
月間稼働可能時間は120時間となる。
工程別の必要時間を合計し、
「1件あたり何時間かかるのか」を算出すれば、
受注可能件数が逆算できる。
以下は簡易試算の例。
1件あたり総工数:6.8h
月間稼働可能時間:120h
提供可能件数:17件/月
希望件数が20件なら、
スタッフ追加、工程改善、価格改定など
構造の見直しが必要になる。
PRSは「できるのか/できないのか」を数字で判断させる。
スプレッドシートによる反復シミュレーションが重要
PRSは一度作れば終わりではない。
運用してみると、工数のズレや予想外のボトルネックが必ず生まれる。
そのため、スプレッドシートで以下を繰り返す。
- 工数の手直し
- 生産可能件数の再計算
- 固定費と変動費の構造チェック
- 月次収支の変動
- ボトルネック工程の可視化
「事業の失敗はアイデアではなく実行設計で起きる」という視点が
PRSの中心にある。
PRSはISO9001:2015の流れに沿う「品質設計の考え方」
PRSの思想には、ISO9001:2015の根幹である
「品質の再現性と改善」が色濃く反映されている。
ISO9001:2015が目指すのは、
- 不良
- クレーム
- 返金
- 手戻り工数
これらの削減であり、
結果としてプラスキャッシュ工程へのリソース配分が増える。
PRSはこれを事業設計のレベルに落とし込んだものと言える。
工程の標準化が進むと、
- 工程ミスが減る
- 手戻りが減る
- 顧客満足が安定する
- 生産原価の変動が止まり、予測可能性が高まる
こうして、事業の信用が積み上がっていく。
まとめ:PRSは“現場の実行力”を決める経営技術である
新規事業の成否は、企画段階のアイデアの良し悪しではない。
実行できるかどうかが全てを決める。
PRSが示すのは、
- 全体フローで構造を固め
- QC工程表で標準作業を定義し
- 固定費と工数を数字で可視化し
- 月間生産能力を算出し
- スプレッドシートで改善を続ける
という、極めて地道だが再現性の高い経営技術である。
どれほど魅力的なアイデアでも、
実行不能なら事業にはならない。
事業の本当の強さは「実行の構造化」に宿る。
PRSはそのための実務的な羅針盤である。
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