顧客課題は“宙に浮いた単語ではない”──PRBが示す「ペルソナと課題の共存」という本質

新規事業やマーケティングの現場で「顧客の課題を抽出せよ」と言われることは多い。
だが実務を眺めると、その“課題”はしばしば曖昧なまま扱われている。
「忙しい」「不安」「効率を上げたい」──
書き出してみれば、どれも真っ当な言葉だが、事業の成功に直結する“課題”としては機能しにくい。
コア・ランゲージ・ハブのPRB(課題ファイル)が強調するのは、
「課題は単語ではなく、ペルソナの文脈と共存する現象である」
という点だ。
単発の言葉では人は動かない。
その言葉が“誰の”“どの状況で”“どの未来に向かう途中で”発生しているのか──
この文脈を捉えて初めて、課題は意味を持つ。
■課題は、ペルソナの「今ジャーニー」から切り離せない
PRBが最も重視するのは、
“その人が今どんなジャーニー(行程)を歩んでいるか”
である。
例えば「集客に困っている」という言葉を取り上げても、実際の背景は次のように全く異なる。
- 副業を始めたばかりで、発信の基本を知らない
- 地方の店舗で市場規模そのものが小さい
- 過去に広告で失敗し、心理的抵抗がある
- 人手不足で、SNSに使える時間がない
表面だけ見れば同じ“悩み”でも、
前提条件が違えば課題の構造は別物になる。
課題とは、ペルソナが歩む
“今ジャーニーの結果として発生する現象”
であり、
ペルソナの理解なしには成立しない。
PRBは、ここを最初に整理する。
■未来ジャーニーを描くと、課題の意味が書き変わる
もうひとつ重要な視点がある。
「課題は未来ジャーニーによって変化する」
ということだ。
多くの事業者は“いま困っていること”に集中しがちだが、
購買行動を左右するのはむしろ「これからどんな未来に進みたいか」である。
未来ジャーニーとは、その人が次に歩みたい生活・仕事・状態の“ストーリー”だ。
例を挙げる。
- 現在「営業が苦手」と感じている人でも、
未来に「オンラインで完結する働き方」を望むなら、必要な課題は“営業技術”ではなく“構造化された説明スキル”になる。 - 現在「体調が不安定」と言う人でも、
未来に「仕事のパフォーマンス向上」を望むなら、課題は“症状”ではなく“日常の再現性”に移る。
このように、未来ジャーニー(=理想シナリオ)を定義することで、
課題は単なる現状分析ではなく、**“未来のために解くべき問題”**へと意味が変わる。
PRBが未来ジャーニーを重視するのは、
課題を「改善すべき現象」から「未来を選ぶための鍵」へ昇格させるためだ。
■未来ジャーニーはシナリオ構築と密接に絡む
未来ジャーニーを描くという作業は、
実質的にシナリオ構築と同じ作業である。
ビジネスにおけるシナリオとは、
- 顧客がどんな状態から始まり
- どんな変化を経て
- どんな未来を受け取るか
を描いた“行動物語”である。
PRBが未来側の前提条件を重視するのは、
シナリオとして顧客の未来のストーリーが成立していなければ、
課題を解消しても“未来への動機”にならないからだ。
課題を正しく定義するには、
「いま困っていること」ではなく「どんな未来を選ぼうとしているのか」
に触れる必要がある。
■HARMは“課題の分類”として使うが、中心ではない
PRBでは課題を分類する際、
HARM(Health/Anxiety about the future/Relationships/Money)を参照するが、
これは主役ではない。
HARMはあくまで、
「課題がどの領域に属しているかを俯瞰するための補助線」
として使われる。
重要なのはHARMそのものではなく、
“どんなペルソナが、どのジャーニーの中で、どれに該当する課題を抱えているか”
である。
HARMは断定的に「満たさない商品は買われない」といった絶対則ではなく、
課題の背景を理解するための参照軸として位置づけられる。
より本質的なのは、
課題はペルソナと共存し、時間軸(今→未来)の中で変化する
という構造である。
■結論:課題は“固定された悩み”ではなく、ペルソナの物語の一部である
PRBが描く課題の世界観は、
- 課題は単語ではなく現象
- その現象はペルソナの前提条件によって起きている
- 未来ジャーニーを描くと課題が書き換わる
- シナリオ(顧客物語)と課題定義は不可分
という構造に立脚している。
従来の「課題リスト方式」から脱し、
課題を“その人のストーリーの中で起こる出来事”として扱うことで、
事業はより立体的に、現実に即したかたちで設計できる。
課題は、ペルソナと切り離して存在しない。
そして未来を描けば、課題は変わる。
PRBはその変化を捉えるための、
「課題を物語として扱うフレーム」
である。
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