顧客の“理想の世界”を描けるか──BNFが示す「機能×情緒×価格」の三位一体構造

マーケティングではしばしば「顧客の課題を解決する」ことが強調される。
だが、課題の解消だけでは購買行動は生まれない。
顧客が本当に動くのは、課題の向こうにある「理想の世界(BNF:ベネフィット)」が明確になったときである。
コア・ランゲージ・ハブのBNF(ベネフィットファイル)は、
この“理想の世界”を構造的に描き出すためのフレームだ。
課題(PRB)が「問題の現在地」を示すのに対し、
BNFは「未来側の到達点」を定義する。
■ベネフィットとは「問題が消えた状態」ではない
企業はつい、課題の“除去”をベネフィットと混同しがちだ。
- 集客に困っている → 集客が安定する
- 体調が悪い → 不調が改善する
- 営業が苦手 → 営業ができるようになる
このような構造は正しくはない。
BNFが求めるのは、
顧客の生活や行動そのものが変わった状態
であり、単なる問題解消ではない。
課題を持っている顧客が、
次にどんな行動を取り、どんな日常を築き、
どんな感情を抱くのか。
これを「未来ジャーニーの世界観」として描く。
■未来の世界観は、機能的ベネフィットと情緒的ベネフィットで構成される
BNFは未来の世界を二層構造で理解する。
●1. 機能的ベネフィット(Functional Benefit)
具体的な行動や結果の変化。
例:
- 月5件の問い合わせが自然に入る
- 時間の余裕が1日2時間生まれる
- 説明が簡潔になり、誤解が減る
- 健康データが安定し、日中のパフォーマンスが上がる
- 単価2倍でも成約率が落ちない
これは未来の「結果」であり、数字に落ちやすい。
●2. 情緒的ベネフィット(Emotional Benefit)
顧客が未来の世界で感じる安心感・自信・自由。
例:
- 「もう焦らずに済む」という精神的余裕
- SNSで自分の価値が自然に伝わることへの誇り
- 選ばれる側になる安心
- 自分の能力が“認められる”感覚
- 未来に対する予測可能性が上がり、不安が軽減する
機能が変われば、情緒も変わる。
むしろ購買の最終決定は、この情緒側が担う。
■BNFが明確になると、“支払意思額”が見える
顧客は、ただ課題を解消したいのではない。
未来のどんな状態にいくら払えるかを判断している。
ここでPMQ(Price × Quantity)と結びつく。
例えば、
「月20万円の副業収入を安定させたい」というBNFを持つ人は、
年間20万円〜50万円の自己投資を許容するケースが多い。
一方、
「月に1時間の時短が欲しい」程度の軽いBNFなら、
数千円〜数万円が限度になる。
つまり、BNFは価格設定の根拠になる。
●BNF → PMQ のつながりを整理するとこうなる
- 顧客が求める未来像が大きい
- 行動や収益の変化が大きい
- 情緒的満足度も高い
- 支払意思額(P)が高くなる
逆に、
- 未来の変化が小さい
- 行動が変わらない
- 感情的メリットが弱い
この場合、自然と価格は低くなる。
価格は“価値の大きさ”ではなく、
**「未来の変化量の大きさ」**で決まる。
BNFはその未来の変化を可視化する役割を持つ。
■BNFは、ペルソナの未来に“筋の通ったストーリー”を与える
EMP(ペルソナ)の「今ジャーニー」を理解すると、
BNF(未来のベネフィット)に説得力が生まれる。
例として、先ほどの香織さん(地方の副業デザイナー)を再登場させよう。
■香織さんのBNF(未来ジャーニー)
機能的
- SNS→案件の導線が整理され、月5〜7件の依頼が自然に入る
- 単価は1.5〜2倍に上がる
- 顧客との摩擦が減り、修正回数も2割減
- 副業収入20万円/月が安定する
情緒的
- 発信への恐怖が消え、「伝えること」への抵抗がなくなる
- 自分のデザインが“説明できるもの”になり、自信が持てる
- 仕事が“お願いされる側”に変わる
- 「会社にしがみつかなくてもいい」という精神的独立
これはただの改善ではなく、
人生と働き方の視界が開ける未来である。
このBNFを得るためなら、
香織さんは年間20〜50万円(多くは30万円前後)を投資する可能性が高い。
こうした金額推定は、BNFから導かれる。
■BNFの本質:顧客に「その未来は買う価値がある」と確信させる
課題(PRB)が「今の苦しさ」を表すなら、
BNFはその先にある「未来の可能性」を形にする。
BNFが弱いと、
プロダクトは“問題を直す道具”にとどまり、価格も上がらない。
BNFが強いと、
プロダクトは“未来を選ぶ手段”となり、価格は自然に上がる。
顧客は課題では動かない。
未来に動く。
■結論:BNFはPMQを支える“未来設計図”である
BNFは単なるベネフィット記述ではない。
事業設計上、次の役割を果たす。
- ペルソナの未来を描く
- 機能的・情緒的変化を言語化する
- 価格設定の根拠(P)をつくる
- 提供数(Q)の現実性を判断する
- プロダクトの価値を“未来の変化”として説明する
BNFが明確であれば、
その未来にいくら払えるか(PMQ)が自然に決まる。
BNFは、
課題を超えて“未来の世界観”を売るためのファイルであり、
事業の収益構造を支える軸でもある。
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